ある街で感じた突然の恐怖

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東北某県の地方都市を訪れた。

 

ここは県内では3番手か4番手ぐらいの規模で、日本の大多数の都市と同様に城下町由来で発達した。東京からはるばる揺られて降り立った駅前広場には、若干の飲み屋街と駐車場があるだけで、あとはタクシーが空しく来訪客を迎える。通りを挟んだ駅前一等地ともいえる場所は更地のままで、自治体主導による再開発計画が宣伝されているが、遅々として工事は始まらない様子である。

駅前から伸びる中央通りは、まるで90年代から時が止まってしまったかのような雰囲気で、シャッターが閉じられた店の連続である。本町の方へ進むと、ようやく市役所や地元資本の百貨店、地銀・信金の支店といった中心業務地区に出るが、昼時でも閑散としている。6階建の百貨店は威信をかけた豪華なつくりが往年の繁栄を思い起こさせるが、今となっては客より店員が多いといった状況だ。言わずもがな周辺の商店街は空洞化が激しく、仏具店も茶具店もどこも憔悴しきった開店休業状態である。

市の中心部をぐるりと迂回するように国道のバイパスが整備されているが、今や商業の中心はそちらに移ってしまったようだ。郊外型のショッピングモールや大型量販店が建ち並ぶバイパス通りは、むしろ日本の地方部を思い起こさせる景観である。付近には新興住宅街もある。さらに郊外に進むと工業団地に行き着く。ここは産業の中心であろうか、県下有数の物流拠点や製造業の工場が林立するところであり、ひっきりなしに大型トレーラーが出入りする。

この街は、およそ満足な生活ができるはずだ。過度に人口が疎というわけでもないし、生活に必要な環境は比較的整備されている。しかし外部との接触やそれによる日常の変化が見られない。良くも悪くも生活が、地域の生態系内で完結できてしまう。日常が繰り返し繰り返し、いつのまにか時が経っていたというループ系ホラーのような現実、閉塞感のある未来が急に怖くなった。おそらくこの街だけではない、日本全体がそうなっているのかもしれない。すぐに出る列車のチケットを手にした。